スプートニク
ショパン好きが高じて中学生の頃からポーランド関係の本を手当たり時代読み漁っていました。
ポーランドの歴史や政治体制について記述された本はあっても、普通のポーランド人が今どんな暮らしをしているのかなど知る術もないと思っていたある日、新聞広告に目が留まりました。
「ワルシャワ貧乏物語」 工藤久代著
60年代後半から70年代半ばにかけての7年間をワルシャワで過ごした日本人が書いたエッセイ。
(ワルシャワ大学日本学科で教鞭をとる御主人のポーランド文学者工藤幸雄氏の赴任に伴っての滞在)
これは絶対に読まなければ! 近所の書店に予約をして発売と同時に入手、むさぼるように読んだこの本は結婚する時にしっかりハンガリーに持ってきた程、私にとっては大切な、手放せない本です。
著者が暮らした時代のワルシャワは今とは比べ物にならないほど不便な時代でした。
それは私が学生時代に訪れた時もほとんど変わらず。
「あれもない、これもない」と文句ばかり言っても不思議ではない状況の中、著者はポーランド人の逞しさ、前向きな姿勢を見習い、日本食(お豆腐も味噌も納豆も!)を手作りしたり、ポーランドの文化、習慣を理解しポーランド社会に溶けこんでいきました。
この本の中で一番好きなのは「スプートニク」と題された章です。
著者が日本人駐在員の滞在先で見たことのない野菜に出会います。
「これは何ですか」と訪ねる著者に、駐在員はこう答えます。
「何ていうのかな。知らないんですよ。しかしおでんにとても合うんです。大根のような、カブのような味がして」
「ほら、ツンツンここから柄が出ていて宇宙衛星のスプートニクみたいでしょう。だから自分で勝手にスプートニクって呼んでいるんです」
著者は「私はつくづくと考え込んでしまいました。持って生まれた消極的な愚痴っぽい女の性質、男のひとの探究心には遠く及ばないと痛感したのです」と書いています。
日本で見たことのない珍しい野菜、それを素通りせず試してみると意外と美味しいかも。
でも試さない限り美味しさはわからない。
それと同様に、日本とは違うこと、日本には存在しないことにもどんどん挑戦すればどんどん道は開けてくる。
ハンガリーに来てつい文句を言いそうになった時、私は「スプートニク、スプートニク」と呪文のように唱えて、何とか自分なりの解決法を探すように努力しました。
外国に「物が無い」のではなく、日本とは「習慣が違う」だけです。
逆に日本に暮らすハンガリー人は「サラミがない、パプリカがない」と文句たらたらかもしれません。
物が豊かかどうかではなく、食習慣の違い、気候によって採れるものの違いです。
それを「物が無い」と国全体を見下げるような態度をとる人が多いのは悲しいことです。
さて、件のスプートニクとはどんな野菜なのでしょうか?
この写真の右側の薄い緑色のものです。(左の白いのは白ニンジン)
アップにすると・・・
スプートニクと名付けた駐在員さんには座布団10枚差し上げたいくらいですね。
若い人はスプートニクと言われてもよくわからないかもしれないので、本物の写真を貼っておきます。
さて、このスプートニクもどきの野菜、英語ではKohlrabi(コールラビ)、ハンガリー語ではKaralábe(カララーベ)と言います。
あれ???
Kohlrabi
Karalábe
やっぱりLとR入れ替わってるやん!!! おいおいハンガリー人!
ポーランドの歴史や政治体制について記述された本はあっても、普通のポーランド人が今どんな暮らしをしているのかなど知る術もないと思っていたある日、新聞広告に目が留まりました。
「ワルシャワ貧乏物語」 工藤久代著
60年代後半から70年代半ばにかけての7年間をワルシャワで過ごした日本人が書いたエッセイ。
(ワルシャワ大学日本学科で教鞭をとる御主人のポーランド文学者工藤幸雄氏の赴任に伴っての滞在)
これは絶対に読まなければ! 近所の書店に予約をして発売と同時に入手、むさぼるように読んだこの本は結婚する時にしっかりハンガリーに持ってきた程、私にとっては大切な、手放せない本です。
著者が暮らした時代のワルシャワは今とは比べ物にならないほど不便な時代でした。
それは私が学生時代に訪れた時もほとんど変わらず。
「あれもない、これもない」と文句ばかり言っても不思議ではない状況の中、著者はポーランド人の逞しさ、前向きな姿勢を見習い、日本食(お豆腐も味噌も納豆も!)を手作りしたり、ポーランドの文化、習慣を理解しポーランド社会に溶けこんでいきました。
この本の中で一番好きなのは「スプートニク」と題された章です。
著者が日本人駐在員の滞在先で見たことのない野菜に出会います。
「これは何ですか」と訪ねる著者に、駐在員はこう答えます。
「何ていうのかな。知らないんですよ。しかしおでんにとても合うんです。大根のような、カブのような味がして」
「ほら、ツンツンここから柄が出ていて宇宙衛星のスプートニクみたいでしょう。だから自分で勝手にスプートニクって呼んでいるんです」
著者は「私はつくづくと考え込んでしまいました。持って生まれた消極的な愚痴っぽい女の性質、男のひとの探究心には遠く及ばないと痛感したのです」と書いています。
日本で見たことのない珍しい野菜、それを素通りせず試してみると意外と美味しいかも。
でも試さない限り美味しさはわからない。
それと同様に、日本とは違うこと、日本には存在しないことにもどんどん挑戦すればどんどん道は開けてくる。
ハンガリーに来てつい文句を言いそうになった時、私は「スプートニク、スプートニク」と呪文のように唱えて、何とか自分なりの解決法を探すように努力しました。
外国に「物が無い」のではなく、日本とは「習慣が違う」だけです。
逆に日本に暮らすハンガリー人は「サラミがない、パプリカがない」と文句たらたらかもしれません。
物が豊かかどうかではなく、食習慣の違い、気候によって採れるものの違いです。
それを「物が無い」と国全体を見下げるような態度をとる人が多いのは悲しいことです。
さて、件のスプートニクとはどんな野菜なのでしょうか?
この写真の右側の薄い緑色のものです。(左の白いのは白ニンジン)
アップにすると・・・
スプートニクと名付けた駐在員さんには座布団10枚差し上げたいくらいですね。
若い人はスプートニクと言われてもよくわからないかもしれないので、本物の写真を貼っておきます。
さて、このスプートニクもどきの野菜、英語ではKohlrabi(コールラビ)、ハンガリー語ではKaralábe(カララーベ)と言います。
あれ???
Kohlrabi
Karalábe
やっぱりLとR入れ替わってるやん!!! おいおいハンガリー人!
by ballade4fmoll
| 2009-04-07 03:20
|
Comments(10)
Commented
by
omuroninnnaji
at 2009-04-07 08:48
x
おもしろい、野菜ですねw
北朝鮮のミサイルが(泣)
北朝鮮のミサイルが(泣)
0
Commented
by
maria
at 2009-04-07 18:59
x
少々不便なほうが頭を使うかも。やわらかい心と頭で日々工夫したいですね。
Commented
by
ballade4fmoll at 2009-04-07 23:27
Commented
by
ballade4fmoll at 2009-04-07 23:36
mariaさん
最近は中華食材店が増えて大抵の物は手に入るようになりましたが、ハンガリーの食材を工夫して美味しい物を作るのは、なんだか「理科の実験」みたいなワクワク感があります。
結婚前にmariaさんから教えていただいた「ヨーロッパの食材で作る和食」のレシピ、今でも大切に利用させてもらってますよ♪
最近は中華食材店が増えて大抵の物は手に入るようになりましたが、ハンガリーの食材を工夫して美味しい物を作るのは、なんだか「理科の実験」みたいなワクワク感があります。
結婚前にmariaさんから教えていただいた「ヨーロッパの食材で作る和食」のレシピ、今でも大切に利用させてもらってますよ♪
Commented
by
bbwan
at 2009-04-08 10:17
x
コールラビは私の大好きな野菜の一つでした。 こちらのものにはめずらしくみずみずしくて、生で食べてもしゃりしゃりしていたし、漬け物にしてもすのはいった大根よりもずっとおいしかったです。
スプートニクと名付けた人はすごいですね。
習慣の違いもあるでしょうけれど、欧州の人より、アジアの人は多文化を受け入れる懐が大きいように思います。それが食文化にも現れていると思います。
スプートニクと名付けた人はすごいですね。
習慣の違いもあるでしょうけれど、欧州の人より、アジアの人は多文化を受け入れる懐が大きいように思います。それが食文化にも現れていると思います。
Commented
by
ballade4fmoll at 2009-04-08 15:57
bbwanさん
コールラビの漬物! ああ、なぜ気がつかなかったんでしょう。
早速薄切りにして塩漬けにしました。早く食べたいです。
昔はこちらで大根が手に入らなかったので、大根の代用品として煮物にしたりお味噌汁の具にしたり、私は火を通すことばかり考えていました。
生でもコリコリして美味しいですよね♪
異文化を受け入れる懐についてですが、これだけ「寿司」がブームになっているのに、海苔が苦手なハンガリー人が多いです。
ヒジキもだめですね、黒いものは口に入れるのをためらうようです。
コールラビの漬物! ああ、なぜ気がつかなかったんでしょう。
早速薄切りにして塩漬けにしました。早く食べたいです。
昔はこちらで大根が手に入らなかったので、大根の代用品として煮物にしたりお味噌汁の具にしたり、私は火を通すことばかり考えていました。
生でもコリコリして美味しいですよね♪
異文化を受け入れる懐についてですが、これだけ「寿司」がブームになっているのに、海苔が苦手なハンガリー人が多いです。
ヒジキもだめですね、黒いものは口に入れるのをためらうようです。
日本の中でさえ、習慣や微妙な気候の違いに面食らってしまう私にはすごく勉強になりました。
受け入れようとする前向きな気持ちになれば、その違いさえも楽しむ余裕ができるのかな・・・と感じました。
バラードさんはすごいなと思います(*^-^*)
私も今日から「スプートニク」を合言葉にしたいと思います♪
受け入れようとする前向きな気持ちになれば、その違いさえも楽しむ余裕ができるのかな・・・と感じました。
バラードさんはすごいなと思います(*^-^*)
私も今日から「スプートニク」を合言葉にしたいと思います♪
Commented
by
ballade4fmoll at 2009-04-09 04:01
実愛さん
いえいえ、私はすごくもなんともないですよ。本の受け売りだけですから。
この本全体が異文化に対して前向きに取り組む姿勢で貫かれていて、でも肩に力が入っているのではなく、自然に自分なりのやり方で現地に溶け込んでいく様子がとても印象に残りました。
これを最初に読んだ時はまさか自分が外国で暮らすことになるとは思いもよりませんでしたが、こちらに来てからはこの本に何度励まされたことか。
自分なりのやり方でいろいろなものを受け入れて、毎日を楽しく過ごしたいですね。
ところでキーシン今日本ですね。またリサイタルのお話聞かせて下さいね。
いえいえ、私はすごくもなんともないですよ。本の受け売りだけですから。
この本全体が異文化に対して前向きに取り組む姿勢で貫かれていて、でも肩に力が入っているのではなく、自然に自分なりのやり方で現地に溶け込んでいく様子がとても印象に残りました。
これを最初に読んだ時はまさか自分が外国で暮らすことになるとは思いもよりませんでしたが、こちらに来てからはこの本に何度励まされたことか。
自分なりのやり方でいろいろなものを受け入れて、毎日を楽しく過ごしたいですね。
ところでキーシン今日本ですね。またリサイタルのお話聞かせて下さいね。
コメントを読みながら、私もお漬物は気づかなかった!!と、一つ嬉しいことが増えた感じ。スープは元より大根の代わりに煮込みに使うことは結構あったけれど、私も早速お漬物でもしてみます!
スプートニクを知らなかったので、お話を途中まで読んでる間は、白い円盤型のカララーべなのかなとか想像してたのですが、写真を見てホント、似てる。
スプートニクを知らなかったので、お話を途中まで読んでる間は、白い円盤型のカララーべなのかなとか想像してたのですが、写真を見てホント、似てる。
Commented
by
ballade4fmoll at 2009-04-10 00:47
Tamaさん
お漬物は盲点でしたね!
早速浅漬け作ってみたらコリコリして美味しくて、病み付きになりそうです。
工夫次第で美味しい物がいろいろ作れますね。
円盤型、わかりますよ~。私はあれを「UFO」と呼んでいます。
自分で密かに名付けていたのに、いつだったかお店でうっかり「UFO下さい」と言ってびっくりされました。
でも「あ、これね。確かにUFOだね」と笑ってくれました。
あと、長いかぼちゃは「ひょうたん」と呼んでます。形が似てるでしょう?(笑)
お漬物は盲点でしたね!
早速浅漬け作ってみたらコリコリして美味しくて、病み付きになりそうです。
工夫次第で美味しい物がいろいろ作れますね。
円盤型、わかりますよ~。私はあれを「UFO」と呼んでいます。
自分で密かに名付けていたのに、いつだったかお店でうっかり「UFO下さい」と言ってびっくりされました。
でも「あ、これね。確かにUFOだね」と笑ってくれました。
あと、長いかぼちゃは「ひょうたん」と呼んでます。形が似てるでしょう?(笑)
ハンガリー人の夫とブダペストで暮らす関西人のひとりごと
by ballade4fmoll
S | M | T | W | T | F | S |
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
31 |
カテゴリ
自己紹介ハンガリーあれこれ
ブダペストの風景
食べ物
野球、スポーツ
音楽、観劇
映画
言葉
夫
日本
乗り物
よもやま話
生き物
最新の記事
よいお年を |
at 2018-12-31 20:48 |
こんなん売ってた! |
at 2018-07-02 00:55 |
古いピアノ |
at 2018-05-23 16:07 |
リスト チャリティコンサート |
at 2018-05-21 02:13 |
バラーティ君のモーツァルト |
at 2018-04-16 18:15 |
以前の記事
2018年 12月2018年 07月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
more...